特別講演会

  • 2022年10月22日(土)13:00-15:00 Zoomによる講演会をYouTube でライブ中継します。各講演に関連したご質問も受け付けます。
  • 参加(視聴)方法:終了しました。

13:00-13:40

人工知能の最先端研究に迫る ~大規模グラフニューラルネットワークの世界へ

鈴村 豊太郎(すずむら とよたろう)
情報基盤センター データ科学研究部門 教授

 

グラフ解析とはデジタル空間や現実世界における「ヒト・モノ・コト」の関係性を簡潔に表現・解析する学問で、昨今ではニューラルネットワーク技術を組み合わせた新たな研究領域「グラフニューラルネットワーク(GNN)」として注目を浴びています。

「グラフニューラルネットワーク」の実社会での応用はまさに今実証が拡大するステージにあり、たとえばソーシャルネットワークにおけるユーザー同士の関係、金融システムにおける取引の流れ、Eコマースにおけるユーザーと商品の関係、自然言語における単語間の関係、化学物質における原子や分子のつながりなど、幅広い分野での応用が始まっています。扱われるグラフデータもごく小規模なものからソーシャルネットワークで用いられるような数百億単位の大規模なものまで多岐にわたり、時間経過に伴って動的に変化する特徴を持つものまで存在します。

画像認識や音声認識などの分野では主役となる技術が古典的な機械学習からニューラルネットワークを用いた深層学習へと移行していますが、グラフ解析の分野においてもそうしたイノベーションの波が到来しています。本講演では、今まさに実用化が広がる「グラフニューラルネットワーク」の世界の一端をご紹介したいと思います。

講演イメージ画像
鈴村 豊太郎
鈴村 豊太郎
プロフィール
東京大学大学院・情報理工学系研究科・教授(情報基盤センター教授を兼任)。コンピュータ科学者。
2004年にIBM 基礎研究所(東京)に入所し、2013年から欧州拠点。2015年から米国NYの研究所本部・IBMワトソン研究所およびMIT-IBM Watson AI Labにてグローバルチームをリードし、人工知能・グラフ深層学習に関する研究開発及び社会実装を行う。
2021年3月に帰国し、現職。大規模データ処理の速度を競う国際コンペティションGraph500では世界1位を合計10回獲得。

主な研究分野
研究分野は大規模グラフ解析、グラフニューラルネットワーク、機械学習、人工知能の社会応用、スーパーコンピューティング。
13:40-14:20

重力波検出器KAGRAと重力波観測の最前線

田越 秀行 (たごし ひでゆき)
宇宙線研究所 宇宙基礎物理学研究部門 教授

 

重力波は、アインシュタインの一般相対論から導かれる重力の波です。2015年9月にアメリカのレーザー干渉計型重力波検出器LIGOによって初めて直接検出されました.それ以来、これまで連星ブラックホール合体や連星中性子星合体などにより発生した重力波が既に90回程度観測されています。特に2017年8月の連星中性子星合体は、重力波だけでなく、ほぼ同時にガンマ線バーストが観測されると共に、重力波観測による位置情報をもとにして、あらゆる波長の天文観測装置によっても観測されるという、天文学的に極めてインパクトのある現象となりました。

現在世界には、アメリカのLIGO2台、ヨーロッパのVirgo、そして日本のKAGRAがあります。これら4台の検出器は、2023年春から次回の観測運転を予定しており、更に多くの重力波信号が観測されると期待されています。KAGRAもこの観測において重力波天文学に貢献することを目指して準備を進めています。

本講演では,重力波とは何かから始まり,これまでの重力波観測とKAGRA検出器の状況,そして今後の重力波観測の展望についてお話しします。

講演イメージ画像
眞弓 皓一
田越 秀行

プロフィール

京都大学理学部卒。大阪大学大学院理学研究科助教、大阪市立大学大学院理学研究科准教授などを経て現在に至る。

主な研究分野
重力波を中心とする宇宙物理学・一般相対論を研究テーマとしている。KAGRAで今後取得されるデータを、LIGO-Virgoのデータと共に解析することで重力波信号を検出し、重力波天文学のさらなる発展に寄与することを目指している。

 

14:20-15:00

重力とは何か

大栗 博司(おおぐり ひろし)
カブリ数物連携宇宙研究機構・機構長

 

重力は、私たちを地球の表面に縛り付ける、自然界で最も身近な力です。 一方、宇宙を理解するための鍵であり、最も謎に包まれた力でもあります。 この数十年の間に、理論と観測の両面から目覚ましい発見があり、 空間、時間、重力に対する私たちの見方は大きく変わりました。

今回の講演では、重力の7つの不思議をご案内し、最近の研究について説明します

講演イメージ画像
大栗 博司
大栗 博司
プロフィール
1989年東京大学理学博士
2009年仁科記念賞
2016年アメリカ芸術科学アカデミー会員
2019年紫綬褒章


1986年東京大学理学部助手
1988年プリンストン高等研究所助教授
1989年京都大学数理解析研究所助教授
1994年カリフォルニア大学バークレイ校教授
2000年カリフォルニア工科大学教授(2007年よりフレッド・カブリ教授)
2014年カリフォルニア工科大学ウォルター・バーク理論物理学研究所所長
2016年アスペン物理学センター総裁
2018年東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構機構長
2021年アスペン物理学センター理事長

主な研究分野
素粒子論