ゲノムから探る!母なる海から離れた魚たちのサバイバル術
石川 麻乃(いしかわ あさの)
大学院新領域創成科学研究科 先端生命科学専攻 准教授
母なる海から川へ、陸へ、空へ—。生物はさまざまな場所に進出し、進化してきました。
最近、このような「新しい場所に進出する能力」には、生物ごとに違いがあることが分かってきました。
その一つの例が、魚の海から淡水域への進出です。例えば、サケなどの一部の魚たちは、海から川や湖に何度も進出し、定着する一方で、多くの魚たちはこれらの淡水域に進出できていません。では、一体何が、この違いを生んでいるのでしょうか?
最近、私たちは海から淡水域へ進出する能力の鍵となっているのがドコサヘキサエン酸 (DHA)という脂肪酸を作る遺伝子だということを発見しました。
この講演では、最新の研究データから、魚たちがどのように海から川や湖に進出し、適応してきたかをお話しします。
![講演イメージ画像](TKpic2021/gsfs.jpg)
![石川 麻乃](TKpic2021/ishikawa.jpeg)
1983年 | 神奈川県川崎市生まれ |
2002年 | 埼玉県立熊谷女子高等学校 卒業 |
2006年 | 北海道大学 理学部 生物科学科 卒業 |
2008年 | 北海道大学 大学院環境科学院 生物圏科学専攻 修士課程 修了 |
2008年 | 日本学術振興会 特別研究員 DC1 |
2011年 | 北海道大学 大学院環境科学院 生物圏科学専攻 博士課程 修了 |
2011年 | 日本学術振興会 特別研究員 PD(国立遺伝学研究所 新分野創造センター) |
2014年 | 国立遺伝学研究所 新分野創造センター 特任研究員 |
2015年 | 国立遺伝学研究所 助教 |
2020年 | 東北大学 大学院生命科学研究科 助教(クロスアポイントメント) |
2021年 | 東京大学 大学院新領域創成科学研究科 准教授 |
主な研究分野
進化生物学、生態進化発生学、比較生理学
生体・医療材料を志向した高強度高分子ゲル開発の最先端
眞弓 皓一(まゆみ こういち)
物性研究所 准教授
高分子ゲルは、長いひも状の高分子鎖が連結された網目構造に水などの溶媒が閉じ込められた柔らかい材料の総称です。特に溶媒を水とするハイドロゲルは、高い生体適合性を有していることから、人体に埋め込む生体材料への応用が期待されながらも、脆弱な力学強度が問題となっていました。私達は、引っ張ると頑丈になる自己補強ゲルを世界に先駆けて開発しました。 本ゲルを引っ張って大きな負荷を加えると、高分子鎖が結晶化することで硬くなり、ゲルの破断が抑制されます。その結果、自己補強ゲルは世界最高水準の強靭性を示します。また、大きな負荷がかかって一度高分子鎖が結晶化しても、力を取り除くと即座に元の状態に戻ることから、自己補強ゲルは強靭性に加えて優れた即時復元性を示すことも明らかとなりました。 従来の高強度ゲルでは、変形に伴う内部構造の破壊によって強靭性を向上させていたため、繰り返し変形下における回復性に難点がありました。 自己補強ゲルは強靭性と即時復元性を併せ持つ世界初のゲル材料となります。自己補強ゲルは、繰り返し大きな負荷がかかっても一定の力学応答を示すという特性から、人工靭帯・関節などの人工運動器への応用が期待されます。
![講演イメージ画像](TKpic2021/issp.jpg)
![眞弓 皓一](TKpic2021/mayumi.jpg)
プロフィール
2007年 | 東京大学工学部物理工学科 卒業 |
2009年 | 東京大学大学院新領域創成科学研究科物質系専攻修士課程 修了 |
2011年 | 東京大学大学院新領域創成科学研究科物質系専攻博士課程 修了 |
2012年 | ESPCI ParisTech 博士研究員 |
2014年 | 東京大学大学院新領域創成科学研究科物質系専攻 助教 |
2018年 | 東京大学大学院新領域創成科学研究科物質系専攻 特任講師 |
2020年 | 東京大学物性研究所附属中性子科学研究施設 准教授 |
主な研究分野
高強度高分子材料の開発、高分子材料の力学・破壊特性解析、高分子材料の構造・ダイナミクス計測
航空機機体製造技術開発プロジェクト(CMI)の活動について
臼杵 年(うすき ひろし)
生産技術研究所第2部(機械・生体系部門) 教授
先進ものづくりシステム連携研究センターおよびコンソーシアム(CMI)では、航空機の機体製造技術に関して一歩先んじるための技術開発を行っています。研究テーマは、毎年評価を行い精査して、マイルストーン設定に対して企業による進捗状況の評価を受け、実施しています。
本講演では、CMIで実施しています研究テーマの最近の内容について紹介します。航空機の機体製造に関して一般と異なる特殊性は、部品サイズに関わらず一定の精度が求められる点です。5mの部品でも小物部品と同じ精度(加工精度だけでなく残留応力によるゆがみも含めて)が求められ、また加工品位を含めた部材の信頼性が求められる点です。さらに航空機の製造は、特に組み立てや検査において労働集約的な作業が多く存在します。労働人口の減少や熟練技術者/作業者の減少も直近の課題となっています。このような課題の解決に向けて我々は高度自動化工場の実現を念頭に置いた取り組みを行っています。その具体例の一つとした産業用ロボットの高精度化があります。ロボットはそもそも人の動きを模倣するというところからできたものです。したがって、工作機械のような高精度および高剛性を求めていませんでした。これを外付けでの補正を組み込んで6軸汎用ロボットにて無負荷時で要求精度をクリアする位置精度および軌跡精度を達成しています。また残留応力によるゆがみの抑制についても事前に予測できるシミュレーションの開発を含めて取り組んでいます。さらにメタルデポジションによる造形技術、熟練技術を取り込んだ加工技術の効率化やCFRPの切削コンペティションなどに取り組み、活動しております。
![講演イメージ画像](TKpic2021/iis_h.png)
![臼杵 年](TKpic2021/usuki.jpg)
1958年 | 岡山県岡山市生まれ |
1976年 | 岡山県立岡山操山高等学校卒業 |
1981年 | 国立広島大学工学部第1類卒業 |
1983年 | 国立広島大学大学院工学研究科設計工学専攻修了 |
1983年 | ㈱松下電器産業ビデオ事業部商品技術1部設計3課 |
1985年 | 国立広島大学工学部助手 |
1997年 | 国立島根大学総合理工学部助教授 |
2004年 | 博士(工学)取得 |
2006年 | 国立大学法人島根大学総合理工学部教授 |
2012年 | 国立大学法人島根大学総合理工学研究科教授 |
2017年 | 国立大学法人東京大学生産技術研究所教授 |
主な研究分野
難削材料(Ti合金、Ni基超耐熱合金、高硬度焼入れ鋼、繊維強化複合材料、セラミックス、焼結鋼、ステンレス鋼、高Siアルミニウム合金など)の切削加工および切削工具開発(主にコーティング工具)やBelag(工具摩耗面に生成する保護膜)生成機構の解明、難削材の高速切削、酸化を利用した凝着の抑制などを行ってきた。また超高圧クーラント、放熱型工具開発の研究を行っている